軽快なモバイラー生活を送るためには、不本意ながらFreeBSDではないOSを使うことになることもしばしばです。 FreeBSDを動かそうと思うとちょっと大型のノートパソコンを使わざるを得なかったりもします。 そんななかでも前号のSony VAIO PCG-C1VJやFujitsu LOOXは福音足り得るコンピュータでしょう。 VAIOの売りがカメラならば、LOOXの売りはDVD-ROMでしょう。 今回は編集部からFujitsu LOOX T5/53Wをお借りできましたのでFreeBSDでの動作を御報告します。
カタログからスペックをまとめたものをTable 1に示します。
Table 1. LOOX T5/53Wのスペック
詳細 | dmesgの表示 | |
---|---|---|
CPU | Crusoe TM5600 533MHz | |
メモリー | 128M | |
HDD | 10GB | TOSHIBA MK1016GAP |
VIDEO | ATI RAGE Mobility-M,1280x600 | |
APM | APM BIOS V1.2 | |
PCカード | TypeII x 1 | VLSI 82C146 |
USB | 2 | AcerLabs M5237 (Aladdin-V) USB controller |
IEEE 1394 | 1 | Texas Instruments TSB12LV26 |
DVD-ROM | 内蔵 | MATSHITADVD-ROM SR-8175 |
サウンドカード | AcerLabs AC-link | 認識せず |
その他のデバイス | H'' in モジュール, 内蔵モデム, S端子 | |
大きさ | 264 x 183 x 31.5mm, 1.5kg(バッテリーを含む) |
OSはレンタル時点での最新の4.2Rをインストールしました。 参考にしたページは以下の通りです。
LOOXへのLinuxインストール: SシリーズへのPlamo Linuxのインストール記録。
Crusoeプロセッサ搭載ノート「FMV BIBLO LOOX」(富士通)における動作状況について: Turbo Linuxの動作確認です。
Sシリーズの場合、USBフロッピーなどからブートして、PCカードのネットワークカードを利用してインストールすることになるでしょう。 USBですがBIOSのUSBフロッピーの設定をはいにしておかなければ利用できないので注意して下さい。 PCカードのために特別な設定を行う必要はないようです。
参考までに4.2Rでfirewireサポート(コラム参照)をしたカーネルのdmesgをFigure 1に示します。
Figure 1. dmesg
Copyright (c) 1992-2000 The FreeBSD Project. Copyright (c) 1979, 1980, 1983, 1986, 1988, 1989, 1991, 1992, 1993, 1994 The Regents of the University of California. All rights reserved. FreeBSD 4.2-RELEASE #0: Sun Mar 4 11:49:41 GMT 2001 root@:/usr/src/sys/compile/firewire Timecounter "i8254" frequency 1193182 Hz CPU: Pentium (532.43-MHz 586-class CPU) Origin = "GenuineTMx86" Id = 0x543 real memory = 117440512 (114688K bytes) avail memory = 109817856 (107244K bytes) Preloaded elf kernel "kernel" at 0xc03ef000. md0: Malloc disk npx0: <math processor> on motherboard npx0: INT 16 interface pcib0: <Host to PCI bridge> on motherboard pci0: <PCI bus> on pcib0 pci0: <unknown card> (vendor=0x1279, dev=0x0396) at 0.1 pci0: <unknown card> (vendor=0x1279, dev=0x0397) at 0.2 pci0: <AcerLabs M5237 (Aladdin-V) USB controller> at 2.0 irq 11 pci0: <unknown card> (vendor=0x10b9, dev=0x5451) at 4.0 irq 9 chip1: <AcerLabs M15x3 Power Management Unit> at device 6.0 on pci0 isab0: <AcerLabs M1533 portable PCI-ISA bridge> at device 7.0 on pci0 isa0: <ISA bus> on isab0 pcic-pci0: <TI PCI-1410 PCI-CardBus Bridge> irq 9 at device 12.0 on pci0 pcic-pci0: TI12XX PCI Config Reg: [ring enable][speaker enable][pwr save][FUNC pci int + CSC serial isa irq] atapci0: <AcerLabs Aladdin ATA33 controller> port 0x1400-0x140f irq 0 at device 15.0 on pci0 ata0: at 0x1f0 irq 14 on atapci0 ata1: at 0x170 irq 15 on atapci0 pci0: <unknown card> (vendor=0x14d5, dev=0x0002) at 18.0 irq 9 fwohci0: <Texas Instruments TSB12LV26> irq 9 at device 19.0 on pci0 pcilynx0: PCI bus latency was changing to 200. fwohci0: could not map memory device_probe_and_attach: fwohci0 attach returned 6 pci0: <ATI model 4c52 graphics accelerator> at 20.0 irq 9 fdc0: direction bit not set fdc0: cmd 3 failed at out byte 1 of 3 atkbdc0: <Keyboard controller (i8042)> at port 0x60,0x64 on isa0 atkbd0: <AT Keyboard> irq 1 on atkbdc0 psm0: <PS/2 Mouse> irq 12 on atkbdc0 psm0: model Generic PS/2 mouse, device ID 0 vga0: <Generic ISA VGA> at port 0x3c0-0x3df iomem 0xa0000-0xbffff on isa0 sc0: <System console> on isa0 sc0: VGA <16 virtual consoles, flags=0x200> pcic0: <VLSI 82C146> at port 0x3e0 iomem 0xd0000 irq 10 on isa0 pcic0: management irq 10 pccard0: <PC Card bus -- kludge version> on pcic0 pccard1: <PC Card bus -- kludge version> on pcic0 sio0: configured irq 4 not in bitmap of probed irqs 0 sio0 at port 0x3f8-0x3ff irq 4 flags 0x10 on isa0 sio0: type 8250 sio1: configured irq 3 not in bitmap of probed irqs 0 isa_compat: didn't get irq for lnc ad0: 9590MB <TOSHIBA MK1016GAP> [19485/16/63] at ata0-master UDMA33 acd0: DVD-ROM <MATSHITADVD-ROM SR-8175> at ata1-master using PIO4 Mounting root from ufs:/dev/ad0s1a pccard: card inserted, slot 0 pccard: card inserted, slot 1 fwohci0: <Texas Instruments TSB12LV26> irq 9 at device 19.0 on pci0 pcilynx0: PCI bus latency is 200. fwohci0: could not map memory device_probe_and_attach: fwohci0 attach returned 6 ohci0: <AcerLabs M5237 (Aladdin-V) USB controller> mem 0xffe00000-0xffe00fff irq 11 at device 2.0 on pci0 usb0: OHCI version 1.0, legacy support usb0: <AcerLabs M5237 (Aladdin-V) USB controller> on ohci0 usb0: USB revision 1.0 uhub0: AcerLabs OHCI root hub, class 9/0, rev 1.00/1.00, addr 1 uhub0: 4 ports with 4 removable, self powered fwohci0: <Texas Instruments TSB12LV26> irq 9 at device 19.0 on pci0 pcilynx0: PCI bus latency is 200. fwohci0: could not map memory device_probe_and_attach: fwohci0 attach returned 6 wi0: <WaveLAN/IEEE 802.11> at port 0x240-0x27f irq 3 slot 0 on pccard0 wi0: Ethernet address: 00:02:2d:02:3e:e4
XサーバはXF86_SVGAが利用可能です(Figure 2)。 クイックポイントのスクロール機能は利用できませんが、ボタン2として利用可能なので、3ボタンマウスになります。 /etc/XF86Configの抜粋をFigure 3に示します。
Figure 3. /etc/XF86Configの抜粋
Section "Pointer" Protocol "PS/2" Device "/dev/sysmouse" Resolution 100 Buttons 5 ZAxisMapping 4 5 EndSection Section "Monitor" Identifier "Primary Monitor" VendorName "Unknown" ModelName "Unknown" HorizSync 30-64 VertRefresh 50-100 Modeline "640x480" 45.8 640 672 768 864 480 488 494 530 -HSync -VSync Modeline "800x600" 69.65 800 864 928 1088 600 604 610 640 -HSync -VSync Modeline "1280x600" 63.61 1280 1280 1384 1688 600 600 604 628 -HSync -VSync EndSection Section "Device" Identifier "Primary Card" VendorName "Unknown" BoardName "ATI Rage 128 (generic)" VideoRam 4096 EndSection Section "Screen" Driver "SVGA" Device "Primary Card" Monitor "Primary Monitor" DefaultColorDepth 24 Subsection "Display" Depth 16 Modes "1280x600" "800x600" "640x480" ViewPort 0 0 EndSubsection EndSection
DVDですが、xine(ports/graphics/xine)を使うことで見ることができます。 ただし、地域コードを用いて暗号化されているものは見れません [1] 。 詳細は本誌No.2の新着Ports Selectionを参照してください。 必要な作業は以下の通りです。
/etc/sysctl.confに以下の記述を入れる。
kern.ipc.shmmax=67108864 kern.ipc.shmall=32768
ln -s /dev/acd0c /dev/dvdをする。
リブート。
まずは性能評価を行います。 /usr/objが無い状態でmake -j 4 buildworldした結果をTable 2に示します [2] 。 メモリの大きさが同じ程度であれば、PentiumII 400MHzよりも遅いです。
Table 2. make buildworldの結果
CPU | メモリ | real | user | system | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
TM5600 533MHz | 128MB | 10471.75 | 4756.54 | 1368.23 | LOOX T5/53W |
[参考]Pentium II 400MHz | 128MB | 7021.58 | 4293.59 | 1112.08 | デスクトップ |
[参考]Mobile Pentium III 600MHz | 64MB | 9235.85 | 2693.10 | 639.48 | ノート |
バッテリのもちについての評価ですが、/usr/srcでmake buildworldをした時のフル充電からバッテリ切れまでの時間は80分強でした。 これはハードディスクに通電し続けるため非常に負荷の高い状態です。 さらに、DVDを見つづけた状態では、60分でした。 Windows Meで同じことを行った場合、80分もちました。 ということで、どちらにせよ新幹線で電源無しでDVDを見つづけると言う夢は打ち砕かれました。 普通の負荷ではどれぐらいもつかですが、この原稿を書くために電源を入れたままで90分程度使った程度では問題なく利用可能で、50%程度の残量でした。 その後サスペンドしている間にお亡くなりになったので、連続利用可能時間は良くわからないままです。 いずれにせよ評価用の機械なのでバッテリがへばっている可能性も考えられます。
サウンドカードが認識しないのは大きな誤算でした。 これでは魅力が半減してしまいます。 ちなみにLinuxでは音が出ているらしいので非常に悔しいです。
モデム/H'' inモジュールは最初からあまり期待していませんでした。 tipで/dev/cuaa0をたたくとカーネルが見事に落ちてしまいました。 手持ちのPCカードモデム(Megahertz XJ3288J-P,IO DATA PCMA-9664P)やEtherカード(Planex FNW-3600-T,Melco WLI-PCM-L11)などは無事使えているので特に問題を感じませんでした。
最大の問題はS端子からの出力ができなかったことです。 これでは、プレゼンテーションができません。
総合的な評価としてはプレゼンテーション用途での利用をしないのであれば、間違いなく買いでしょう。 夏のボーナス一括払もはじまっていますので、今すぐお店に行きましょう;-)
IEEE 1394はなりものいりで登場した割にはあんまり普及していません。 が、最近のノートパソコンには標準で搭載されている機種も増えてきていますので、これからは対応デバイスの増加も期待できるのでは無いでしょうか。
FreeBSDでIEEE1394のデジタルビデオを扱うためのデバイスドライバとしては、WIDEのDVTSプロジェクトで開発されたものがあります。 解説記事としては、情報処理学会誌 Vol.41 No.12の「高品質メディアIP転送技術の実証実験報告」が手に入りやすいでしょう。 残念ながら私の手元にはデジタルビデオがないのでデバイスの確認しかできていませんが認識はできているようです。 Linuxではまだ使えないようなので、これは大きな利点です。
なぜこのコラムがここにあるかといいますと、LOOXのサウンドカードが鳴らなかった時に、USBのオーディオドライバを鳴らしてお茶を濁そうと思っていたのです。 が、FreeBSDのohciドライバの実装が完全でなかったので、結局LOOXでは音を鳴らす時間がないままにレンタル期間終了になってしまいました(;-;) というわけで、LOOXでuaudioを鳴らそうと思うとNetBSDからohciの欠落部分を持ってきて埋めると言う作業が必要になります。 手元にohciのデバイスがないので、残念ながら私には試せないのです。
さて、最近、北陸先端科学技術大学院大学の会津さんによってUSBのオーディオデバイスであるuaudioのFreeBSD対応デバイスドライバがテスト公開されました。 既に十分実用的なレベルに仕上っています。 このドライバは4.2R以降の4.2-STABLEでcommitされた機能を利用していますので、4.2Rではそのままではインストールできません。 4.3Rを待つか4.2-STABLEで利用してください。
現時点ではドキュメントが整備されていませんが手順は以下の通りになります。
アーカイブを取得、展開する。
作成されたuaudioディレクトリのパッチを当てる。 この時、
/usr/src/sys/conf/でfiles.diffを当てる。
/usr/src/sys/dev/usb/でusb_port.h.diff,usb_quirks.h.diff,usb_subr.c.diff,usbdevs.diffを当てる。
また、uaudio.c,uaudio_pcm.c,uaudioreg.hをこのディレクトリにコピー。
カーネルコンフィギュレーションファイルに以下を追加 [3] 。
device uaudio device pcmカーネルを再構築し、インストール。
/devで./MAKEDEV snd0してデバイスファイルを作成する。
ちなみに、FMV-MF4/600Rでのdmesgは以下の通りになります。
uaudio0: audio rev 1.00 pcm0: <USB Audio> on uaudio0 uhid0: Philips Electronics Philips USB Digital Speaker System, rev 1.00/1.00, addr 2, iclass 3/0
[1] | ということは普通に販売しているものは見れません。 どこかが暗号モジュールだけプラグインで提供してくれないでしょうか… |
[2] | Personal UNIX No.2のカーネルハッカー養成講座も参考にしてください。 |
[3] | USB関連(uhci,ohci,usbなど)が入っていることも確認してください。 |