題目 「FreeBSD PRESS 製品レビュー「MITSUBISHI FREQUPS-Fシリーズ FW-F10-0.5K」 - 無停電電源装置」 著者 FreeBSD PRESS 編集部(後藤大地) 作成年月日 Thu May 22 16:46:45 2003 更新年月日 $Date: 2003/05/22 07:50:29 $ 1 MITSUBISHI FREQUPS-Fシリーズ FW-F10-0.5K FW-F10-0.5Kは三菱電機株式会社より販売されている常時商用給電方式の無停電電源装置です。39,800円(実売価格20,000〜25,000円)で販売されています。 三菱電機株式会社では無停電電源装置としてFシリーズ、Aシリーズ、Vシリーズの3シリーズを提供しています。 Fシリーズは200Wから300Wの常時商用給電方式でクライアントコンピュータや周辺機器などを対象にした小型無停電電源装置です。サイズも小さく比較的安価で同社シリーズ中最も購入しやすいシリーズです。Aシリーズは400Wから2100Wのラインインタラクティブ方式でサーバコンピュータや外部記憶装置などを対象とした無停電電源装置です。据え置きタイプとラックタイプが用意されています。Vシリーズは400Wから3500Wの常時インバータ給電方式でサーバコンピュータや工場の製造装置などを対象とした無停電電源装置です。据え置きタイプとラックタイプの他、200V電源にも対応したモデルが用意されています。 FW-F10-0.5KはFシリーズの無停電電源装置です。小型で安価であり、それ相応の性能を備えています。 三菱電機株式会社FREQUPSシリーズの何と言ってもの魅力はFreeBSDに対応している点にあります。無停電電源装置をバックアップ電源としてだけ利用するのであればソフトウェアは必要ありませんが、自動シャットダウンを実行する場合はソフトウェアによる制御が必要になります。FREQUPSシリーズはFreeBSD用ソフトウェアが提供されています。無停電電源装置の通信プロトコルは比較的安易で公開されていることも多いのでソフトウェアを自作すれば動作はしますが、対応ソフトウェアが提供されているのとされていないのとではまったく使い勝手が違います。 しかもこのソフトウェアはソースコードの状態で提供されているので、ダウンロードはしたもののライブラリの依存関係で動作しないということがありません。ビルドして利用することができます。 バッテリのバックアップ時間は初期状態が満充電で周囲環境25℃の場合の目安値です。バックアップ時間は周囲の状況によって変動します。またバッテリの寿命時にはこの半分程度までバッテリ時間は減少します。 無停電電源装置は通常バックアップ電源として機能します。そして大抵の場合バックアップ電源として機能し始めたらソフトウェアによってOSのシャットダウンを行うように設定します。ソフトウェアはメーカが提供していたりプロトコルが共通であればportsからインストールして利用することができます。 FW-F10-0.5Kにはこの機能機能以外に6つの特徴的な機能があります。 ・一定時間内シャットダウン待機機能 ・復電時のリブート機能 ・OSのシャットダウン時にUPSもシャットダウン ・UPS電源OFFによるOSのシャットダウン時にUPSもシャットダウン ・UPSの遠隔ON/OFF ・自己診断機能 もっとも嬉しい機能は復電時のリブート機能です。これは停電などでOSをシャットダウンしたのち供給電源の監視を続け、復電してから5分後にマシンを再起動する機能です。これはサーバを運用している場合など嬉しい機能です。停電後に一旦OSはシャットダウンされますが、復電すれば自動的にマシンが再起動されます。サーバの自動復稼働が可能になります。 ただし、再起動はUPS自身を再起動することで行いますので、通電しただけでは起動しない計算機では意味がありませんから注意してください。 復電時のリブート機能と同時に一定時間内シャットダウン待機機能も重要です。たとえば瞬間的な停電であったり数秒程度の停電の場合、FW-F10-0.5Kはシステムのシャットダウン処理を行わずそのまま動作を続けます。 これら機能によって計算機の稼働時間を極力伸ばすようにすることができます。 FW-F10-0.5Kでは停電などでOSをシャットダウンしたときにしばらく後にUPSもシャットダウンできるようになっています。UPSのバッテリ残量を効率よく利用することができます。 この機能は停電などではなくUPSの電源OFF時にも行うことができます。この機能は作業用PCなどで有用です。 FW-F10-0.5Kにある機能のうちおもしろい機能はUPSの遠隔ON/OFF機能です。UPSの背面に遠隔ON/OFF入力端子が用意されています。この端子に電線を接続して遠隔地からUPS電源スイッチが可能になっています。サーバを別室に設置している場合や数台あるUPSの電源を一括管理したい場合などに重宝します。 また交換にあたり重要になってくる自己テスト機能がついています。電源起動時に自動でバッテリやUPS機能の診断を行います。 FW-F10-0.5Kは縦横両方向の設置が可能である他、全面にバックアップLED、過負荷警報LED、バッテリ交換LED、4段階のバッテリ容量LEDがあり動作状態が把握しやすい作りになっています。今回レビューしたUPSの中で唯一バッテリ容量LEDを搭載しています。 2 レビュー環境 FreeBSD 5.0-Releaseにて動作確認を行いました。 FW-F10-0.5Kと上記の機材を付属のRS232Cケーブルで接続します。付属以外のRC232Cケーブルでは動作しない可能性があります。必ず付属のRC232Cケーブルを使用してください。 OSのシャットダウン機能等を有効にするためにFW-F10-0.5K用ソフトウェアFREQSHIP-mini for FreeUNIXをダウンロードしてインストールします。 ソフトウェアはFREQSHIP-mini for FreeUNIXダウンロードページhttp://www.nagoya.melco.co.jp/FREQUPS/down/down2.htmlから取得します。 インストールの方法はウェブサイトおよび展開したREADMEファイルにあります。手引きに従ってインストールを行います。 このソフトウェアはインストール時に/etc/rc.localおよび/etc/rc.shutdownを更新します。システムを再起動すると本ソフトウェアが稼働します。 本ソフトウェアをアンインストールするには「make uninstall」を実行します。 configureで指定した設定は/etc/freqship/UPSFILEに保存されます。設定を変更するにはこのファイルを編集してシステムを再起動してください。 インストールが環境したらシステムを再起動するかサービスを起動しておきます。 3 レビュー FW-F10-0.5Kの動作切り替えはすべてFW-F10-0.5K背面の設定スイッチで行います。ソフトウェアの変更はいっさい必要ありません。 また全体に渡って、UPSがシャットダウンするまでの時間をOSがシグナルを出してから5分後まで延長したい場合は設定スイッチ2をOFFに、その時間を1分にする場合は設定スイッチ6をOFFにします。 3.1 一定時間内シャットダウン待機機能 UPSのコンセントを抜くと、FreeBSDの方には「*** System shutdown start in 60 seconds」と表示されます。この場合60秒以内にコンセントを指すと「*** Input Power RESTORED !!」と表示されシャットダウン処理は動作しません。 シャットダウンするまで何秒待つかは/etc/freqship/UPSFILEファイルを書き換えることで設定することができます。状況に応じて適切に書き換えましょう。設定ファイルを書き換えた場合はシステムを再起動するかサービスを再起動してください。 3.2 復電時のリブート機能 設定スイッチ4および設定スイッチ2をOFFにし他をONにします。 UPSのコンセントを抜いてみましょう。FreeBSDがシャットダウンしたことを確認してからコンセントを入れます。復電してから5分後にUPSに再起動がかかりFreeBSDが再起動されます。 FreeBSDの場合設定スイッチ2もOFFにしておく必要があります。その点に気をつけてください。 3.3 OSのシャットダウン時にUPSもシャットダウン 設定スイッチ1および設定スイッチ2をOFFにし他をONにします。 UPSのコンセントを抜いてみましょう。FreeBSDがシャットダウンしUPSの電源も落ちます。 FreeBSDの場合設定スイッチ2もOFFにしておく必要があります。その点に気をつけてください。 3.4 UPS電源OFFによるOSのシャットダウン時にUPSもシャットダウン 設定スイッチ1および設定スイッチ2をOFFにし他をONにします。 UPSの電源をOFFにしてみましょう。FreeBSDのシャットダウン処理も動作しUPS, OS共に終了することを確認します。 UPSの方で作業用PCのON/OFFを行って利用する場合などこの機能を有効にしておきましょう。 FreeBSDの場合設定スイッチ2もOFFにしておく必要があります。その点に気をつけてください。 3.5 UPSの遠隔ON/OFF FW-F10-0.5Kの背面に遠隔ON/OFF入力端子があります。2本線を引くことができます。試験を行うには導線を引いて端を接触させ続けたり離したりすることで行えます。 遠隔ON/OFF入力端子からとってきた導線は、接続している状態がON、離している状態がOFFになります。計算機を接続した状態でそれぞれONおよびOFFの動作を確認しましょう。先の図に示したような動作を確認することができます。 常用するには導線を被膜で多い、スイッチの部分に押したら押しっ放しになるタイプのスイッチを購入して接続しておきましょう。 3.6 自己診断機能 FW-F10-0.5Kの電源を入れると自動的に自己診断機能が動作します。自己診断中はパワー/バックアップ表示LEDが点滅します。 4 レビュー〔まとめ〕 FW-F10-0.5Kは今回レビューした製品の中で唯一FreeBSDに正式対応しています。背面の設定スイッチで動作の切り替えができますし、全面のLEDでバッテリ残量(4段階)が確認できる唯一のモデルです。 一方、過電流保護機能がヒューズなので過電流が流れた場合ヒューズを交換する必要があるのと、ユーザによるバッテリの交換はできませんのでバッテリ交換時はメーカに問い合わせる必要があります。 総合して判断すると、FreeBSDに対応している点と全面LEDでバッテリ残量を確認できることを高く評価することができます。背面の設定スイッチで動作を切り替えられるあたりも秀逸です。FW-F10-0.5Kで培った技巧はそのまま同社の他のシリーズのUPSに対しても適用することができますし、対応OSも多いことから他のOSを利用する場合にもこのUPSで培ったスキルを応用することができます。他の安価な同レベルモデルに較べると多少高価ですが、FreeBSDを用いている計算機でUPSの導入を考えているのであればFW-F10-0.5Kはまず最初に検討するべき製品と言えるでしょう。 5 Appendix: 設定スイッチ一覧